『  月の光 ― moon light sonata ― (2)  』

 

 

 

 

 

 

  ほんとうに いいの?   ―  彼女は何回も聞いた。

そのたびに 彼は鷹揚にうなずき、余裕しゃくしゃくな態度で応えたのだ。

「 もちろん。  ちゃんと見学して博士に報告するよ。  

 フランソワーズはこんなに頑張ってました ってね。 」

「 もう〜〜〜 ジョーったらあ〜 」

「 だから 頑張れ。  そりゃ・・・ 合格するのが最上だけど さ。

 きみの 踊りたい! って気持ち、 同じ世界の人にわかってもらうために! 」

「 ・・・ ジョー ・・・ あなたって あなたって 〜〜〜 」

ほろほろほろり。  真珠みたいな涙粒が碧い瞳から零れ落ちる。

 

     うわ ・・・ キレイだなあ〜〜〜

     う〜〜ん フランソワーズは泣いててもキレイだよ〜

 

     あ この涙 ・・・ この前のとは全然ちがうよ。

     うん。 涙もきらきら輝いているし!

 

「 あ は ・・・ ぼくなんてな〜〜んも協力できないから ・・・ せめて当日、送ってく。

 都心まででるんだろ? 」

「 ええ ・・・ 」

「 駅はどこ? ・・・・ あ〜 それなら大丈夫。 ぼく、行ったこと、あるから。

 ここからなら 電車とメトロでオッケーだよ。  そんなに時間も掛からない。 」

「 まあ そうなの?? わ〜〜〜 頼もしいのね、 ありがとう〜〜 」

彼女は ぱっと飛びついてきてきゅっとジョーを抱き締めた。

 

     うわ うわ うわ〜〜〜〜〜〜お ♪♪♪

 

「 あ あの〜〜 それで さ、フランソワーズ? 」

えっへん・・・と咳払いすると 彼女はにこにこしたまま彼から離れた。

「 はい なあに。 」

「 だ〜から さ。  練習、ガンバ!  今日からさ〜地下にこもってていいから。 」

先日、 ジョーの大働きで地下のロフトの一室を  フランソワーズのレッスン室  に改造した。

「 ええ ええ そうね! わたしって物凄く贅沢だわ〜〜〜

 個人のレッスン室がお家にあるのですもの。  それも ジョーに作ってもらった・・・ 」

「 い  いやあ〜〜  ・・・ 」

「 ありがとう ジョー。  ・・・わたし 頑張るわ! 」

「 お〜〜し その意気!   練習しろよ〜〜 」

「 はい。  じゃあ ちょっと着替えてきても ・・・ いい ? 」

「 うん!  ( うわ〜〜〜〜♪ ) 」

すぐに戻ってくるわ! の ひと言を残し、 フランソワーズは二階の自室に行った。

 

 

  それで  ジョー君は高鳴る胸をおさえつつ すご〜〜〜〜く期待して期待して  ― 

もう ずっとどきどきどき! 汗まで流れている かも・・・?  ―  待っていた。

「 え〜と。 音響配線 ・・・ よし。  コントロール盤、こっちでいいかなあ〜〜 

 う〜〜ん でもなあリモコン、持つと動きにくいよねえ・・・

 あ♪ そうだ そうだ ・・・ アレがあったよ〜〜 」

彼は 音響機器を見直した。  

「 アレ、使えるかなあ〜〜  ドルフィン号にも搭載してあったし。 ワイヤー・マイクみたいな形状で

 音声ナビ を ちょっと弄ればいいのだものな。  えっと・・・無線LANを使って ・・・ 」

ごそごそ ・・・ プレイヤーの後ろを覗き込む。

 

     「 オマチドオサマ〜〜〜 」

 

爽やかな声が 戸口から聞こえた。

 

     わ ! わお・・・!     どっきんこ〜〜ん!!  ジョーの心臓がでんぐりかえった。

 

「 あ  あは ・・・ え〜〜 フラン〜〜 ? 」

「 ?? ジョー? どこにいるの?  声は  聞こえたけど ・・・ 」

「 ここだよ〜〜  音響機器のうしろ! 」

「 ああ な〜んだ・・・  あら? なにか落としたの?  < 見 > ましょうか? 」

「 ち ちがうよ! 」

ジョーは真っ赤になりつつ 後ろからゴソゴソと出てきた。

「 ジョー ・・・ あら やだ! なぁに〜〜 どうしてこんなに汚れるの?? 」

フランソワーズは柳眉をききき・・・!と釣り上げた。

「 え?  ・・・・だははは  こりゃ・・・ホコリだらけだねえ〜〜 」

自分のスボンやらトレーナーを見て 彼も笑い出してしまった。

「 ここ、ロフトだったし ・・・ ず〜っと使ってなかったから掃除なんてしてないよ〜〜

 あは それにしても 〜〜 ちょっと待ってて! 」

ジョーは廊下に飛び出してホコリを払い ・・・ わくわく気分でもどって来た。

「 ほら これならいいだろ? 」

「 ええ。  あ 探しものはなあに? 」

「 へ??  ・・・ あ 〜 違うんだ〜〜  音響機器のスイッチを超小型の無線LAN に

 できるかな〜〜って思ってさ。 」

「 まあ そうなの?  ・・・普通のスイッチで充分よ? 」

「 でもな〜〜 きみ ひとりでレッスンするだろ。  うごきながらスイッチいれるには

 便利な方がいいだろ。 」

「 ・・・・  ジョ−  ホントに ありがとう・・・! 」

「 えへ いや なに その。  あ ・・・ごめん、練習するんだったよね〜〜 

 今日はぼくが音係、するよ?  」

「 ジョーってば ・・・ もう〜〜なんて 優しいの〜〜   メルシ 〜〜

 今日はね、 久々のレッスンだからストレッチと足馴らし程度にしておくつもりなの。

 だから ・・・ 音はね、これを流しておくだけにしようと思っているのよ。 」

「 流しておく? 」

「 ええ。   え〜と ・・・ ああ これはジョーから教わったのと同じ機械ね。 」

「 ウン。  音楽用のCDプレイヤーさ。  CD、もってきた? 」

「 はい、これをお願いします。  操作はどうやるの? 」

「 あ 上のリビングにあるのと同じだよ。  ここに入れて ・・・ ここが on  のスイッチさ。 」

「 ありがとう、 じゃ・・・ 」

 ・・・・   ゆったりした音が流れだす。

 

      ・・・ ふうん ・・・?  あ これ どっかで聞いたこと、あるかも〜〜

 

ジョーは黙って聞き入っていたが ― ようやく 彼女の方に視線を向けた。

 

      あ?  あれ ・・・ さっきチラっと見たけど ・・・

      ・・・ あ そっか〜〜 これからウオーミング・アップなんだ きっと。

      そっか〜〜 そうだよなあ〜〜 うん きっと そうさ。

 

彼は懸命に自己納得させようと何回も うんうん ・・・と頷いている。

 そう  ・・・ フランソワーズ嬢は  スウェットの上下にウィントブレーカーを着て、

脚には毛糸のもこもこした靴下をはき 首にタオルを巻いていたのだ。

 

     ・・・ な〜んかさ〜〜 ぼくがジョギングに行くときと同じっぽいよな〜〜

     まさか  これから走る・・・のじゃないよなあ・・・

 

     バレエの練習  って。  なにをどうやるんだ???

 

ぽかん ・・・ とした顔で 彼は突っ立ったまま 彼女を見詰めていた。

 

「 え〜〜と ・・・ ああ 身体、 動くかしら〜〜 」

ぺたん、と床に座り込むと 彼女はいわゆる準備体操風のストレッチを始めた。

「 ・・・ あ  ジョー? あの なにか? 」

「 あ!  いや  あの  その ・・・ ウウン!  なんでもないよ〜〜

 あ ! そうだ〜〜 機械の調子 どう?? その・・・CDプレイヤーだけど ・・・ 」

「 ああ これ?  うん いい音ね。  調整してくださってありがとう、 ジョー。 」

「 い いや あの その ・・・ うん、 じゃ また後で来るね。 」

「 はい。  あ ・・・ 用があったら遠慮なく声、かけてね。 

 うふふ ・・・ ジョーのオヤツ、キッチンに出しておいたわ。 

 ジョーの好きなクロック・ムッシュウなの。 レンジで チン! してね。 」

「 くろっく・むっしゅ ・・・って あのチーズとハムの熱々パン? 」

「 そうよ、 ジョー、好きでしょう? 」

「 大大大好きさ〜〜 特にフラン特製のって も〜〜 最高だもん♪ 」

「 うふふ・・・ じゃ それをどうぞ? 」

「 ありがとう〜〜〜  食べたらまた来てもいいかなあ ・・・ 」

「 え ・・・ いいけど ・・・ 見ていてもあまり面白くないと思うけど・・・ 」

「 ・・・あ  あ〜〜 ぼくもたまにはちょっと柔軟体操でもやろっかな〜〜って思ったんだけど  」

「 まあ そうなの? あ〜〜 柔軟体操・・・とはちょっと違うけど。 ジョーも一緒にやる? 」

「 え! いいのかな〜〜 あ ぼくにもできるかな ・・・ 」

「 ジョーは いつもやってる柔軟体操していいのよ。 」

「 あ〜 それならいいなあ・・・ ふうん 音楽流しながらっていいなあ〜 」

「 うふふ でしょ? 」

フランソワーズは笑顔で脚を するり・・・ と180度ちかく開いた。 全然普通の動作なのだ。

彼女はごく当たり前の顔で開脚したまま 髪を結んだりしている。

 

      だは???  うっそ ・・・ なんで ・・・?

 

ジョーは目が張り付いてしまった。 

「 ふんふんふ〜〜ん♪   ああ やっぱり固くなっちゃったなあ〜〜 」

そんなコトを呟きつつ 彼女は脚を手で持って耳の横までももちあげたり、顔の前までもってきたり・・・し始めた!  

そして ぺたん、と床に上半身を倒した。

 

      ・・・ 003 って。 特別な仕様なのか ・・・??

      グレートだって あんなコト できないぜ?

 

      なにか特別はスイッチでもあるんだろうか??

 

「 ・・・ ふん。 ぼくだって! そうさ ぼくだって 009 なんだから! 」

ジョーも < レッスン室 > の隅っこに座り込むと ば!っと開脚してみた。 

 ― ちゃんと脚は開いた。

「 ふ ふ〜〜ん ・・・ どんなもんだい。  で これで 前に倒れて床に上半身、付けるのか・・」

そんなにフクザツじゃないだな〜 ・・・と 彼は 開脚のまま前屈しようとした。

 

   がき。    ・・・・?? 腰近辺のどこかで メカニカル・ノイズ が聞こえた。

 

いや〜〜〜な 音だ。  戦闘中、 馬力の勝る敵に力で押しつぶされそうになったりする時に

人工関節とかが破損する前に聞こえる音と似ている・・・

「 ・・・・ う?? 」

  がき  びし。  ・・・ 不快な音がして  ジョーの上半身はま〜〜〜ったく前屈しない。

本人の意志に反して 押そうが引っ張ろうが断固として前には曲らないのだ。

 えっほ えっほ ・・・  虚しく両腕が突き出されるだけ ・・・

「 ・・・ な なんで〜〜〜〜?? 

ちろり、と隣を見れば   彼女は前屈し上半身をぺったり床に着けたまま片脚づつコンパスみたくに外側に回し 

再び両脚をそろえた。 結果的にはうつ伏せに寝ている状態になっている。 

 

      う う  ウソだろぉ〜〜〜〜〜〜〜〜!???

 

「 はい?  なあに ジョー? 」

顔だけこちらに向けて フランソワーズはにこやかに聞く。

「 い  い   いや   なななな なんでも ・・・ え〜〜っと。 ・・・・

 あの 〜〜 ぼく、 オヤツ 食べてきてもいいかなあ〜〜 」

「 ええ ええ どうぞ。  チン! してね。  あ パントリー ( 食料庫 ) に

 ポテトチップス ( 彼女は決して  ぽてち  とは言わない ) もあるけど ・・・

 あんまり食べ過ぎないでね。 晩御飯がはいらなくなるから・・・  」

「 あ う  うん ・・・ 」

ジョーはもそもそ脚を閉じると そろ〜〜〜っと地下から脱出した。

 ・・・  階段は なんとか登れた。 009の脚と腰は破損してはいなかった  らしい。

「 はあ〜〜〜 よかったぁ・・・ 」

ジョーは思いっきり伸びをすると、キッチンに飛んでいった。

 

「 え〜〜と ・・・? あ これだ これだ〜〜 」

キッチンのテーブルには 美味しそうなクロック・ムッシュウが乗っていた。

「 ふんふん〜〜〜♪ これ〜はっと〜〜 レンジじゃなくてオーブン・トースターのが

 美味いんだよなあ〜〜 ふんふん〜〜〜♪ 」

ジョーは皿をオーブン・レンジに放り込むと、ばしゃばしゃと手を洗った。

「 う〜〜〜 ・・・  しっかしなあ〜〜 フランソワーズってば やっぱ特殊な仕様なのかなあ?

 あの柔らかさは ・・・ 尋常じゃないよ〜〜 」

コーヒーを淹れつつジョーは溜息をついた。

「 やっぱ! BGは許せん! 」    どん。  テーブルが標的になった。

「 ヒトの身体を勝手にあれこれ弄くりやがって・・・!  

 くそぅ〜〜〜〜  その首、 洗ってまってろってんだ! 」

  どん ばん。 今度はドアが攻撃された。

 

  ―  チン〜〜〜 !   レンジを開けると ふわわわわあ〜〜ん! と たまらなく

 食欲を刺激する香りが漂い始めた。

「 お♪  お〜〜〜 いい具合にチーズが溶けてる〜〜〜美味しそ♪ 」

彼は キッチンのテーブルの前にすわると ちょちょい・・・と十字を切ってから

猛然と食べ始めた。

「 !  ウ〜〜〜〜〜〜〜ま〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! 」

熱々で つ〜〜〜っと尾を引くチーズを指で絡めとリつつ ジョーはシアワセいっぱいだ。

この軽食は彼女と知り合ってから初めて味わったのだが 今では大好物である。

「 はふはふはふ〜〜〜 ・・・・  ああ 〜〜 うま〜〜〜〜 」

ぎくぎくいっていた足腰は そこはさすがにサイボーグ、しっかり復帰している。

「 むぐ〜〜 ・・・  ああ 美味かったぁ〜〜  こーひー牛乳にしよっと♪ 」

マグカップに どぼどぼ牛乳とこーひー と砂糖をいれてがしがし混ぜる。

「 ふ〜〜ん ・・・  あ フランソワーズにも持ってゆこ。  ふんふん♪ 」

 

     そうさ  準備運動が終れば アレ・・・ 脱いで さ

     下にはきっと あの! 水着みたいなヤツ 着てるんだ   きっと!

 

「 ふふふ〜〜〜ん♪ 」

トレイには熱々のカフェ・オ・レ、そして彼女が大好きなオレンジを輪切りを乗せて

ジョーは得々として地下に降りてゆく。

 

     さ〜あ これでちょっと一息いれたら? って さ。

     そうね〜〜 って あの水着みたいなので 彼女は笑うよ〜〜

 

     はい どうぞ。 なんて渡してさ。

     ありがとう〜〜 美味しいわ♪  って 上気した顔で言ってさ。

     き きっと ・・・ ムネとかフトモモとかピンク色になっててさ〜〜

 

     うわ〜〜〜 うわ〜〜〜♪♪♪  うふふふ・・・・〜〜ん♪

 

 まあ ・・・18歳の青少年としては当然の発想で ジョーは期待にムネを震わせて

<レッスン室> のドアをノックした。

 

  ノック ノック ・・・ !

 

「 あ〜〜 入ってもいいかなあ〜〜 フラン? 」

「  ジョー?  どうぞ〜〜 一々断らなくて結構よ。  」

「 あ  うん ・・・ あの〜〜お茶 どう・・・・    あ? 」

明快な音楽がず〜〜〜っと聞こえていたから 彼女は優美に踊っている! と思っていたのだが。

水着みたいなヤツを着て、長くてキレイな脚もむき出しで踊っている! と期待していたのだが。

 

  シュ ・・・ シュ  シュ ・・・!  トン  シュ  ・・・ シュ シュ ・・・ !  カツン!

 

彼女は 例のスウェットの上下ともこもこ毛糸のウォーマー そして首のタオルもしっかり

巻き付けたまま。  部屋の真ん中に脚付きの台?に置いた棒に片手を置いている。

音楽は流れ続けていて ―  彼女の脚がその音を追っている。

しかし おそろしく単調な動きを くりかえし くりかえし ・・・ やっている。

「 ??? な なんだ ??? 」

突然、 くるりと彼女は向きを変え、反対側を向くとまた際限もなく脚を動かし続けるのだ。

 

      ??? なにやってるんだ??  床みがき ・・・ まさか な。

      え〜〜〜  なんかすげ〜〜暑そうだけど ・・・

      脚で何かしてるのかな?  いや そうでもないけど・・・

      音楽と関係あるのかなあ〜〜??

 

彼女の脚を目で追っているうちに ジョーはなんだか目が回ってきた。

「 ・・・ ジョー ? なにかご用? 」

  シュ ・・・ シュ   シュ  ・・・シュ ・・・

空を切って脚を回しつつ、質問が飛んできた。

「 ・・・!?  あ  あの〜〜〜  お茶 ・・・ もってきたんだけど・・・ 」

「 あらあ〜〜 ありがとう! もうすぐバーが終るから ・・・ そこに置いてくださる? 」

「 あ  う  ウン・・・  ( ばー??  バーなんてどこにあるんだ?? ) 

「 メルシ。  もうちょっと待ってね。 」

「 あ  ああ  ・・・ 」

ジョーはトレイをレッスン室の片隅に置くとそのすぐ側に座り込んだ。

棒に掴まって 彼女の動きはどんどん大きくなってゆく。  最後には前に 横に 後ろに ・・・と

脚を大きく振上げて ・・・ 音と共に脚も止まった。

 

「  ・・・ ふうう 〜〜〜〜 ・・・・ ああ やっぱりナマっているわあ〜〜〜 

 

  カタン。  

 

棒から手を離すと彼女は今度はその棒に脚を乗っけて またもやその脚に向かって

前屈を始めた!  そして 次には脚を片手で持ちアタマの上まで持ち上げたのである。

 

      ・・・・  うっそ ・・・!

 

「 う〜〜ん ・・・ でもいいきもち 〜〜〜 」

「 ・・・・・・・ 」

「 ?  ジョー? なあに。 」

ジョーの方に顔を向け 脚から手を離したのだが ― なぜか! 脚はそのまま彼女の耳の横に

きっちり天井に向かって上げられたままなのだ。

 

      !!?  透明なヒモとかで固定してるのかな??

 

「 ・・・ ぁ  あ 別に  その ・・・ あの お茶 ・・・ 」

「 そうだったわね〜〜 ありがとう ジョー。 今 頂くわね〜〜  」

すとん、と脚を下ろし首からとったタオルで ゴシゴシ顔を拭きつつ彼女はジョーの方にやってきた。

 

      わ ・・・!   ・・・ きれいだなあ〜〜〜〜

      ほっぺ 桜色じゃん♪♪

      しっかしなあ〜〜  このスウェット もしかしてず〜〜っと着てるつもりかな?

      い いや!  バレエってば あのひらひら〜〜〜 ふりふり〜〜〜だろ?

 

      ・・・ は!  も もしかして。 もしかして〜〜

           ぼくの聞き違えで ・・・! 

      ばれえ  じゃなくて  バレー  なのかも??

      フランソワーズは バレーボールの選手を目指していたのか・・・??

 

ピンク色に上気した頬で微笑む彼女を見詰めつつ ジョーはもう混乱の極みだ。

「 あ ・・・う  うん ・・・ 」

「 わあ オレンジ〜〜 嬉しいわぁ  メルシ〜〜 ! 」

   ちゅ♪  可愛いキスがジョーのほっぺたをかすめた。

「 (  うわ〜〜〜〜〜〜〜♪♪ )  あ  は ・・・  」

「 あ〜〜〜 美味しい♪ この国のフルーツは本当に美味しいわね〜〜〜

 ジューシーで甘くて大きいのよね。 ふんふんふ〜〜ん♪ 」

「 ・・・ あ  あの ・・・ フランソワーズ ・・・れ 練習は ・・・ 」

「 ええ ざっとバーをやったから。 あと ・・・30分くらいやってるわ。

 あ  オヤツ、美味しかった? 」

「 え?  うん! 激ウマだよ〜〜 ぼく、くろっく・むっしゅ 大好きさ。 」

「 ふふふ ・・・ わたしもよ。 わたしの兄も大好物だったわ。  」

「 そうなんだ?  ・・・ あ ごめん。 もうジャマしないから ・・・ ゆっくり練習しなよ。 」

「 ありがとう〜〜 ジョー。  自分の家にレッスン室があるなんて本当に夢みたい・・・

 わたし 頑張るわね!   オーディション、頑張る! 」

「 そ その意気だよ〜〜  ガンバレ〜〜  全力応援! だからね。  

 あ。 あのさ ・・・ ひとつ 聞いてもいいかなあ。 」

「 ええ なあに。 」

「 うん ・・・ そのう・・・ きみ達の練習って いつもその・・・今きみがやってたみたいなことを

 するわけ?  その ・・・ 棒に掴まって さ。 」

「 棒 ?? 

フランソワーズはしばらく目をぱちぱちさせていたが やがてくすくす笑いだした。

「 うふふ ・・・ そうねえ〜〜  この棒ね、 皆そうなのよ。

 ほら ・・・ 歌だったら発声練習やるでしょ。 サッカーとかバスケとかは ・・・ 多分

 パスの練習を始めにするのじゃない? 

「 あ・・・ うん そうだね〜 そうだったなあ。 野球は・・・キャッチ・ボールだし・・・ 」

「 でしょ? それと同じようなものなのよ。 」

「 ふうん ・・・ あ ごめん もうジャマしないよ。  がんばれ〜〜 」

ジョーはトレイを持って そそくさと引き上げた。

ドアを閉める時にちら・・・っと振り返ったが 彼女は相変わらずスウェット姿のまま・・・

部屋の中央に立ち しきりに背伸びやジャンプを繰り返していた。

 

     あれ??  ・・・ やっぱ バレーボール なのかな ・・・

     アタ −−− ック  とか  サーブ とかやるのかな?

     ! あれ? じゃあ ボールはどこにあるんだ??

 

     え? だってそもそもバレーボールって鏡のある部屋でやるか??

     う〜〜〜 ・・・ なにがなんだかわくからなくなってきた・・・!

 

補助脳が空回りしているらしい。  ジョーは頭を振り振り階段を登っていった。

 

 

 キュ。  ・・・ カチャン。

マグカップと皿をしっかりと拭いて 食器棚にしまった。

「 ふう ・・・  これで よし・・・っと。 」

ジョーはストン・・・とキッチンに置いてあるスツールに腰を落とした。

「 ・・・ フランソワーズ ・・・ 凄いなあ・・・ ちゃんと目標があるって凄いよ・・・ 」

イマイチ、よく解らないけれど ともかく彼女の真摯な姿勢には感動モノなのだ。

「 あ。 彼女だけじゃない か・・・  張大人だってグレートだって ピュンマも さ。

 皆 自分の目標に向かってまっしぐら・・・だもんなあ・・・ 」

 

     ―  じゃあ  ぼく  は。

 

ジョーは  はた! と考えこんでしまった。

とんでもない運命の大嵐にもみくちゃにされてしまったけれど ―  一応 暴風雨が去った今。

さて 自分はなにをしてこれからの人生を歩んでゆくべきか?

「 ・・・ う〜〜ん ・・・ 手っ取り早く言えば さ。 何に熱中し追ってゆくか ・・・だよなあ。 」

  カツン。  キッチン ・ テーブルに肘をつき 彼は考え続ける。

「 そうだよなあ ・・・ 博士なんかもう全身熱中のカタマリみたいなヒトだし ・・・

 イワンは ああ 彼はぼくなんかとは次元がちがうわよな 〜 」

つらつら以前の生活を考えてみれば ― はっきり言って日々の生活でいっぱいいっぱいだった。

施設の中で年齢が上がってゆけば それ相応の役割や仕事も増えていた。

  ―  将来? ・・・ う〜〜ん 進学とかは無理だから・・

  そうだなあ・・・ 福祉士とか介護士とかになれれば いいかな ・・・

< 島村ジョー君 > は たしか、そんな風にぼや〜〜〜っと将来を希望していた。

 

 けど。 今 ―  180度どころか3D的変遷をしてしまった運命の元・・・ さて どうする?

 

「 あ ・・・やっぱ 車関係が好きかなあ。 <乗る> とか <作る> は無理だけな〜〜

 けど ・・・ 感想とかなら。 そうだ そうだ チビの頃は  かんそう文 もスキだったっけ・・・」

ふ〜〜む ・・・ ジョーの瞳が次第に焦点を合わせてゆく。

モノを書くことは好きだった。 わりとマメに日記を書いていたし この仲間達と一緒になってから

<日誌> みたいなモノを書いていた。  

 

     書く ・・・ か。     ウン・・・ なにかそんな方面で働いてみようか・・・

 

具体的にどうするか はまだ全然思い浮かばないけれど ともかく目指す方向だけでも

彼は決めておきたかったのだ。

「 ふ〜ん ・・・ でもなあ 本格的な文筆家って方向は無理だよなあ。  そんなに才能ないし。

 ま・・・ レポーター とか 軽めのライター系をめざす、かなあ・・・ 」

おおまかな目標はだいだい決まった。  じゃ どうやってその < やま > に登るか、

が 問題なのだ。

「 ともかく さ。  彼女に相応しいオトコになるために が最終目標 だから。

 がっちり一歩づつ登ってゆくもんね! 」

ジョーは ぐ・・・っと拳を固めると、  パン! と 自分自身の手の平に向かって 打った。

 

     おし!  それじゃ〜〜〜 ぼくの戦闘開始! 

 

 

 

「  ここ ・・・ かあ ・・・」

彼は何回も手元の紙とビルの表示を見て確認をしている。

  アスカ ・ ビル。  ―  ちょいと古びたビルの壁にこれまたくすんだロゴが埋め込んである。

 

     よし。  行くぞ。  ・・・ 戦闘開始!

 

ジョーは心の中で自分自身に掛け声をかけると 深呼吸をしてから目の前のビルに入っていった。

 

 

< ジョーの就活 >  いや 単なるバイト探し が始まって数週間 ・・・ はやり現実は

 そんなに甘くはなかった。

「 う〜〜〜ん ・・・ なかなかないもんだなあ〜〜  作業系とか接客系の仕事は

 結構あるけど。  う〜〜〜ん ・・・ でもそれじゃ目標とはちょっとちがう ・・・

 とりあえず資金稼ぎっていう点ではいいけど・・・ でも ・・・ 」

就活情報誌を広げたり ネットを使ったり 彼は苦戦していた。

フランソワーズもレッスン室に篭っているので 彼はリビングで熱心に検索をしたりしている。

 

     う〜〜・・・・ やっぱ無理なのかなあ ・・・・

     でも! 諦めるのはイヤだ!

 

     フランソワーズは ず〜〜〜っと諦めなかったじゃないか!

     ぼくだって  ぼくだって ・・・!

 

ふううう〜〜〜 ・・・ それでも現実はなかなか厳しく パソコンの前で溜息がもれる。

 

「 ・・・ 就職活動の調子はどうかね。 」

不意に後ろから声がかかった。

「 !  ・・・ 博士 ・・・ あ お茶ですか 〜〜 」

びっくりして振り向けば 博士が湯呑を持って立っていた。

「 あ〜〜 すいません、全然気がつかなくて ・・・ ああ ぼくってホントに 」

「 いやいや 熱中している証拠じゃよ。  どうじゃ ・・・ 目星はついたか。 」

「 ・・・ いやあ〜〜 それが ・・・ キビシイです ・・・ 」

ジョーは博士の湯呑を受け取り、 キッチンに立った。

「 博士〜〜〜  お茶でいいんですかあ?  それとも コーヒー とか? 」

「 ああ お茶でよいよ。  日本茶がなあ 気に入ってしまってな。 ワシには合っているらしい。 」

「 はい じゃ 今熱々を淹れておきますね〜 」

「 ありがとうよ ・・・  ところで仕事の件じゃが。 出版社 というのはどうかな。

 若いヒトには面白くないかのう・・・?  」

「 ・・・ はい ? 」

ジョーはトレイに なみなみ茶を注いだ湯呑と急須を乗せてきた。

「 しゅっぱんしゃ? 」

「 うむ。  ちょいとなあ ・・・ これはコズミ君からの話なのじゃが。

 都心の方にある小さな出版社なんだが・・・アルバイトを探しておるそうなんだと。 」

「 ・・・え ・・・! 」

「 まあなあ ・・・ 零細なトコじゃから雑用係も兼ねるじゃろうが ・・・

 一応編集部所属ってことで いろいろ ・・・ やってもらいたいことが山積みだそうだ。

 どうかね、 覗いてみるだけでも ・・・ 」

「 やります! ・・・あ  ってか ぼく、応募します!  教えてください! 」

「 お?  乗り気じゃのう?  しかし 勿論すぐには編集作業などには加われんぞ。

 当分は見習いというか助手というか まあ なんでも屋だろうな。  」

「 ええ ええ 当然ですよ〜〜 雑用係、なんだってやります! 

 そこ ・・・ 試験はいつですか? あの ・・・ ぼくでも応募資格はあるのでしょうか!

 ぼくは ・・・ なんの資格も実績もないですし ・・・  」

「 ジョー ・・・ 」

博士はじっとジョーをみつめている。

「 はい? あ やっぱりなにか資格が必要ですよねえ・・・ それに語学とか・・・ 」

「 いや。  お前のその本気の熱意が <応募資格> じゃよ。 頑張りたまえ。 」

「 は はい!  ありがとうございます! 」

「 おお やる気満々じゃな。 それでは明日、コズミ君に会いにいっておいで。

 そこでいろいろ聞いてこい。 」

「 はい! 挑戦します! 」

ジョーは 頬を紅潮させ頭をさげた ・・・ 彼の頬はピンク色に上気していた。

 

    そうさ! ぼくだって。 フランソワーズには負けられないよっ

    彼女の頑張りに感心しているばっかじゃ ・・・ 置いかれる!

 

    彼女に相応しいオトコになるためには! ぼくだって!

 

・・・理由はなんであれ、 ジョーは腹を括り人生の < 戦闘状態ニ入レリ > となった。

 

 

 

 オーディションに  彼女は合格することはできなかった。

かなり悲惨な出来栄えに 彼女自身ひどく反省していたので当然の結果 と受け止めることができた。   

でも やっぱりかなり落ち込んだ。    張り詰めていたモノが一気に崩れた気分だった。

 

    ・・・ 仕方ない・・・ けど。  ・・・ああ でも ・・・ でも ・・・

    うふ ・・・ な 涙が 止まらない ・・・ 

    ・・・ 身体中にすうすう風が抜けてゆく わ ・・・ 寒い ・・・

 

タオルでごしごし顔をこすって 足早に更衣室に戻ろうとしていた  ― その時。

「 あの ・・・ すみません? ちょっと ・・・・ 」

オーディションでミストレスを務めていた女性が声をかけてきた。

「 ・・・ はい? わたし ですか。 」

 

希望の役に選ばれることはできなかった。

 

  しかし    ちゃ〜〜んと彼女の本質を見極めるヒトもいて

 

フランソワーズ ・ アルヌール嬢は そのバレエ・カンパニーの研究生となることができた。

以来、 彼女は毎朝、電車とメトロを乗り継ぎ満員電車にもみくちゃにもなり ・・・

都心付近のバレエ ・ カンパニーのレッスンに通っているのだ。

かなりの距離を 毎朝毎朝 ・・・ 彼女は嬉々としてレッスンに通っている。

遅刻ギリギリの日も多いのだが ともかく頑張っている。

 

「 なあ ・・・ 本当に大丈夫かい?  送ってゆくってば・・・ 」

「 大丈夫〜〜 わたし もうコドモじゃないわ。 道もばっちり、よ。  」

「 あ〜〜〜 そういう意味とはちょいとちがっていて。  」

「 ??? なあに?? ・・・ ジョー。どこか具合悪いの?

 だったらちゃんと博士にメンテナンスして頂かなくちゃ! あなたの試験、近いのでしょう? 」

「 あ  うん ・・・ まあ ね。 」

「 それじゃなおさらよ? しっかり練習しておかないと だめ。 」

「 ・・・ あ〜〜  ・・・ うん  ( 練習・・・ってことじゃないけど さ ) 」

「 それじゃイッテキマス。  あ お昼は サンドイッチが作ってあるわ。 」

「 え!?  そ そうなんだ?  」

「 うふふ・・・ ジョーの好きな クロック・ムッシュウじゃなくてごめんなさいね。

 でもね〜〜 キュウリとチーズとハム のはかなりいけると思うわ。 」

「 フランソワーズ〜〜 すっご〜〜く嬉しいけど 弁当なんて・・・いいよ、朝、忙しいのに・・・ 」

「 平気よ。 朝御飯のついでにちょちょい・・と作ったの。 あ、 トマト・サラダも冷蔵庫にあるわ。

 あ・・・ おにぎり とかの方が 好きだったかしら。 」

「 ! ううん ううん ううん !!  きみの弁当、だ〜〜〜い好きさ!

 ありがとう〜〜 フランソワーズ!  レッスン がんばれ〜〜 」

「 うふふふ・・・ メルシ〜〜ジョー♪ わたしには最高の励ましよ。 」

「 え ・・・ そうかな〜〜 ( でへへへ ・・・ ) 」

「 わたし いっつもジョーから元気を貰っているわ。 」

「 元気??  」

「 ええ。  あの ね・・・ ジョー ・・・ 毎朝 ジョギングしてるでしょう・・・ 凄いなあ・・・って・・・

 思ってみているの。  」

「 ―  え  知ってたんだ・・・? 」

「 ええ ・・・ お日様と一緒くらいの時間に走っているでしょ? 凄いわぁ〜 」

「 ・・・ あ は   ぼくは ・・・ きみに負けないように・・・って思って さ ・・・ 」

「 わたしに?? 」

「 ウン。 いっつも一生懸命なフランソワーズに相応しい・・・じゃなくて!

 きみみたいに頑張ろう〜〜って思ってマス! 」

「 わたし達 ライバルね♪  じゃ イッテキマス〜〜♪ 」

 

   ちゅ♪  またまた小さなキスをほっぺに残し、彼女は小走りに玄関から出ていった。

 

「 ・・・あ  い  いってらっしゃい ・・・  (  うわ〜〜〜〜〜〜〜〜! ) 」

ジョー君は完全に舞い上がっていた。

    

 

 

その建物に入った時から 遠くにピアノの音が聞こえていた。

「 どうぞ こちらです。  もうすぐ終わりますから。 」

「 ・・・ありがとうございます。 」

案内してくれた事務所のヒトに ジョーは丁寧に頭をさげた。

ぴし!っとスーツを着て ― でもどこか学生気分満載・・・な 彼に 事務所のお姉さんは

にこにこ ・・・挨拶を返してくれた。

 

   ふふふ ・・・ 就活中デスってカンジね。  フランソワーズさんの弟さんかしら?

 

「 そこのイスにどうぞ。 」

「 ハイ、ありがとうございます。 」

ジョーは でも座っていることなどできずに 窓越しにスタジオの中を覗き込んだ。

彼はフランソワーズの通うバレエ・カンパニーにやってきたのだ。

 

    レッスン ・・・ って ・・・ あの棒に掴まってるのかな

 

    ―   う  わああ〜〜〜???

 

おそらくレッスンの終盤なのだろう。

細っこい女性達が信じられないスピードで回転し 跳んでいた。

同じく細身の男性達も 怖ろしいスピードで回りものすごく高くジャンプしていた。

 

   ・・・ な 生身のニンゲン  なのか!??

 

ジョーが呆然と目を見張っている間に レッスンは終ったようだ。

 

  バン ・・・  ドアが開き まず初老の女性が出て行った。

 

そして わらわらわら ・・・ 汗びっしょりのオトコノコやらオンナノコが出てきた。

ジョーは目立たないようにそっとすみっこに立っていた。

「 え!? ・・・ ジョー ?  どうしたの?? 」

ブルーの < 水着みたいな服 > で 汗まみれのフランソワーズが駆け寄ってきた。

「 なにか ・・・あったの?? 」

「 あ  ううん ううん ・・・ すごいね〜〜〜 レッスン って・・・ 」

「 え?  そう?  ねえ どうしたの?? なぜ・・・ 」

「 ウン。 あ あの・・・  あは♪ ぼく ・・・ これから面接なんだ〜〜 

 その前にフランソワーズの笑顔で 勇気もらおう! と思ってさ。 」

「 まあ まあ まあ!  今度はジョーの番ね。  頑張って。 きっとアナタの気持ちは伝わるわ! 」

きゅ・・・っと手を握り。  碧い瞳が真剣に彼を見詰める。

「 ・・・ うん!  きみのチカラがぼくの中に充電されてゆくよ! 」

 

    ちゅ♪    小さなキスが ジョーのほっぺに落ちてきた。

 

「 ジョー。 祈ってます。  ・・・ これはオマジナイよ♪ 」

「 うわ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・! 」

 

    うん!  もう〜〜 これで!  あとは  勇気だけさ!

 

 

 

 

 

   ザザザ −−−−− ・・・・・・    ザザザ ・・・・

 

大波小波が寄せては引いて ・・・ また寄せてくる。

夜になると 海風はまだまだかなり冷たい。

「 ・・・ なあ 寒くないかい。 」

ジョーは傍らを歩く彼女にそっと手を伸ばす。

「 大丈夫。 たっくさん着込んできたから。 」

フランソワーズも手袋を取って差し出された手に白い手を預けた。

 

     え ・・・ へへへ ・・・ 小さい手だなあ・・・ でも あったかい!

 

     うふふ ・・・ 大きな手、温かい手 ね!

 

二人で手を繋いだまま ぽくぽく家への田舎道、海沿いの道を歩いてゆく。

 ジョーの < 就活 > の結果はまだわからない。

「 きっと ・・・ 上手くゆくわよ。 」

「 う〜〜ん ・・・わからないよ。 」

「 そんな ・・・ 」

「 あ でもね。 もしダメでも ― また次にチャレンジする!

 なんか さ。  こう ・・・ エネルギーってか やったるぞ! って気持ち、ガンガン湧いてきた 」

「 さ〜すがよ、ジョー。  うふふ やっと 009のジョー になったわ。 」

「 え・・・ 」

「 だって なんだかココに来てから ず〜っと ・・・ 気が抜けたみたいじゃなかった? 」

「 ・・・ え ・・・ 」

「 あ ・・・ ごめんなさい。  でも ・・・ とっても気になっていたの。 」

「 ・・・ ウン そうかもしれない。 これからどうしたらいいか てんでわからなかったんだ。

 そうだなあ〜〜 道に迷ってたみたいだった ・・・ 」

「 道に ? 」

「 ウン。  でも ね。 フランソワーズ、きみを見てたら ― やる気、沸いてきた! 」

「 まあ ・・・ 」

「 ぼくだって ・・・ やるゾ〜〜ってね。 」

フランソワーズは何も応えずに ただぱあ〜っと艶やかな笑顔を見せた。

 

    うわ ・・・・ ぉ ・・・ !

 

ジョーの胸は きゅ〜〜〜んとなり全身が ぽぽぽ・・・っと熱くなる。

「 ・・・ ねえ 見て。  きれいなお月様 ・・・ 」

「 あ  ・・・ きみ みたい ・・・ 」

「 ・・・え?  

「 だから さ ・・・ そのう ・・・ ぼくには手の届かない存在だなあ〜って・・・ 思って 」

「 !  そ  そんなコト ・・・ わたし  ここにいるわ! 」

きゅ!   フランソワーズは繋いだ手に力を籠めた。

「 いってェ〜〜〜 ! 」

不意打ちを喰らって ジョーが悲鳴をあげた。

「 あ! ご ごめんなさい 〜〜  でも でもね ・・・わたし ・・・ 」

「 うん・・・? 」

「 あのね! わたし ・・・ ジョーが いてくれて すごく嬉しいわ 」

「 いやあ ぼくはこの地域で育ったからいろいろ知ってるし ・・・ 」

「 それじゃなくて!  あ ・・・勿論 と〜〜っても感謝してるケド・・・

 そのう〜〜〜ね?   ―   ジョーって ・・・ ステキだなって。 」

「  え!?!? 」

 

    どっき〜〜〜ん ・・・!   ジョーの人工心臓は想定外の衝撃にひっくり返りそうだ。

 

「 うふふふ ・・・  今夜はね 最高のお誕生日プレゼントだわ! 」

「 え・・・? た 誕生日 って ・・・ だれの? 」

「 わたしの。 」

「 えええ〜〜〜〜〜〜!?!? 」

「 今日はね、わたしの誕生日なの。 」

「 フランソワーズぅ〜〜〜〜〜 それ、 早く言ってくれえ〜〜〜 」

「 え ・・・ ? 」

「 う〜〜〜 なんにも用意してない ・・・  あ そうだ! 」

ジョーは海を背に 彼女の前に立った。 彼の後ろには大きな月が今中天に懸かろうとしている。

 

       「 この光で きみをつつみ きみのシアワセを祈ります! 」

 

「 ・・・・!   ジョー ・・・・・!!! 」

   ぱっと 柔らかくて 温かくて いい香りの しなやかな身体が抱きついてきた。

 

彼の  moon light sonata  は  ばっちりと彼女の心を捉えた  ・・・  らしい

 

 

 

 

******************************     Fin.     *****************************

 

Last updated :  28,01,2014.                   back        /       index

 

 

 

 

***********   ひと言  **********

そしてジョー君はなんとか あの! 少々怪しげな?

編集部に就職したのでした♪

え〜と バレエのレッスンってほっんとうに地味〜〜な

反復練習の繰り返し、なのです。 ソレを積み重ねなければ

ずぇ〜〜〜〜ったいに踊れないのだよ〜〜ん☆